工作機械の歴史と世界の工作機械産業

工作機械の歴史

工作機械の起源は古代エジプトまで辿ることができますが、近代的な工業生産財としての工作機械は、産業革命の推進力となった蒸気機関や紡績機械を製造する必要性から、1770年代にイギリスで発明され、18 世紀末以降、欧米各国で特色ある工作機械が次々と開発されるようになりました。今日見られる工作機械のほとんどは、19世紀後半までにその基礎が築かれたものです。

このように機械の性能は、産業の発達につれて年々向上しましたが、工作機械を用いて精度良く加工するには、長い修練を積んでノウハウを体得した熟練工の存在が不可欠でした。しかし、倣い装置やカムを用いた自動加工技術の開発により同一部品の大量生産が可能となったこと、さらにNC(数値制御)工作機械の出現により異品種大量生産さえも可能になるとともに、機械性能が熟練工の技術をある程度まで補完できるようになったことなど、1970 年代以降工作機械は性能の向上に伴い、生産も大きく増加しました。

今日では、AIやIoT(Internet of Things)を活用して、スマート・マニュファクチャリングの実現を図る取り組みが、世界各国で競われています。日本でも様々な繋がりによって、新たな付加価値の創出や、社会的課題の解決を目指す、“Connected Industries”構想が打ち出されました。この構想のもと、工作機械メーカーでは、工場全体の生産を最適化するスマートファクトリーなど、IIoT(Industrial Internet of Things)に対応した製品と技術開発に注力しています。

また、三次元積層造形技術(Additive manufacturing)も、積層プロセスの選択肢が広がり、実用化の段階に入ってきました。

自動車の電動化の進展、航空機産業の成長に伴う難削材需要の増加、第5世代移動通信システム「5G」に対応した通信機器需要の本格化などによって、需要構造面でも、大きな変化が展望されます。

 

世界の工作機械産業

アメリカ

自動車産業が大量生産を始めた1930年代から本格的な発展を遂げ、第2次大戦で疲弊した欧州を抜き去り、世界のリーダーに登り詰めました。いち早く到来した大衆消費社会を背景に”もの”の生産が増大した一方で、1950年代初期にNC工作機械を初めて開発するなど、消費、生産、技術のあらゆる分野で隆盛を誇ったアメリカの工作機械産業ですが、民生品市場向けNC工作機械の普及では 日本や欧州に遅れをとり、競争力を失ってしまいました。しかし、宇宙・航空機分野で用いる超精密加工機などに関しては、依然として高い技術力、競争力を有しています。 

欧州

今日、欧州の勢威、競争力は 18・19 世紀のように絶対的ではありませんが、技術水準は依然として高く、巨大な統一市場を強固な基盤として、近年再びその存在感を強めつつあります。

特にドイツ勢には、高度な技術と伝統に裏打ちされたブランド力を持つ優れたメーカが多く、日本のライバル的存在です。イタリア、スイスなどでは、ユーザ産業のニーズを捉えた個性的な工作機械が多数生産されています。 

東アジア

中国は、近年高い経済成長を続けており、現在工作機械需要が最も高い国です。自ら生産する工作機械の技術レベル面では未だ先進国と差があるものの、欧米の工作機械メーカを積極的に買収するなど、技術面でも急速に向上しつつあり、生産額は2009年から11年連続で世界1位となっています。

また、韓国・台湾は、日本をモデルケースとして、1980年代から製造業が発展しました。近年は、工作機械の技術水準も著しく向上し、生産額でも常に上位にランクインしています。

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